意識の高いLISPマシン

藤原惟/すかいゆき(@sky_y)の技術用ブログ

報告:岩手の大船渡でボランティア活動してきました

9/17(土)から24(土)まで、岩手県大船渡市の赤崎地区にてボランティア活動をしてきました。


参加の経緯

元々震災について考える機会が少なかったので、たまには震災について考えてみようと思って参加した
「第2回 震災に寄り添う集い」というイベントがきっかけ。
ワークキャンプで欠員が出たということで、たまたま一週間予定が空いていた僕が手を上げました。
出発の4日前に決断するという、我ながら無鉄砲極まりない決断でしたが、
結果としては行って良かったと思っています。

やったこと

あいさつ&ニーズ聞き取り

このワークキャンプは、住人から出たニーズを元に活動するのが基本です。
先遣隊が予めビラを配ってくれていたので、
まずは住民の皆様へのご挨拶とともに、ニーズを聞き出しました。

整地ワーク

今回は、赤崎漁村センターという施設で寝泊まりさせていただきました。
ここは3.11の津波の際に避難所となった場所で、100人以上の人が過ごしていました。
高台の上にあるのでぎりぎり床上浸水で収まりましたが、その周囲は壊滅的な被害を被りました。



センターが避難施設として機能している間、グラウンドが車でぐちゃぐちゃになり、
草も生えっぱなしとなり、運動会などができない状態となっていました。
そのため、このキャンプでは毎朝、グラウンドの地ならしと草抜きを行いました。

ベンチ・踏み台作り

最近になって仮設住宅が完成し、住民がプライベートを保てる場所ができました。
その一方で、住民の方々がゆったりと話すためのベンチや、
洗濯物を干す際の踏み台が欲しいという要望が出てきたため、
ベンチと踏み台を作ることにしました。

インターネット設定

私が受けたニーズとして、インターネットでオークションをするための会員登録を
手伝ったりしました。

台風対策

ちょうどワークキャンプ中に台風が来ていたので、
住民の許可を得て、家の周囲の物を固定して回りました。

交流会

漁村センターの館長の粋な計らいで、
住民の方とボランティアメンバーとの交流会を設けることができました。

その他

他のメンバーは、仮設住宅周辺の草刈り、換気扇の掃除、棚作りなどをやっていたようです。
また、大船渡には「さんさんの会」という、支援物資を材料としてお弁当を作り、
食事に困っている被災者の方々に届ける活動を行っている会があります。
メンバーの一部は、この「さんさんの会」でお弁当作りを手伝っていました。


「さんさんの会」について、詳しくは以下のウェブページをご覧ください。
そして、可能であれば支援をよろしくお願いします。

【東日本大震災】"さんさんの会"活動報告|BAJニュース|認定NPO法人 ブリッジ エーシア ジャパン
さんさんの会 3.11 三陸気仙復興協議会【公式ブログ】

思い出

インターネット設定をしたお宅にて

設定作業が済んだあと、恐縮ながらお茶とプリンをいただき、
震災当日の様子についてじっくりとお話を伺いました。


津波の直前、車に戻ろうとした時、「(海側に)来るな! 津波が来るぞ!」という叫びを聞き、
何とか命が助かったものの、自分の車が目の前で流されたそうです。
「家は流されちゃったけど」という言葉を繰り返していましたが、
その中でも前向きに生きていこうとする姿勢に心を打たれました。

ベンチ・踏み台作り

この作業は、時々住民の方と一緒に行いました。
近くに住んでいる牛乳屋さんが、電動丸ノコやドリルを嬉しそうに扱っているのが
すごく印象に残っています。
しかも仕事が上手い。フリーハンドで丸ノコを扱えるとか、素人とは思えない手さばきでした。


交流会

交流会では、ある住民の方から、被災の詳しい状況についてお話を伺いました。


1. 自衛隊はすごい

自衛隊は、震災から数日で道路を整備したり、お風呂を設置するなど、
色々な面で活躍していたと聞きました。
最初のお風呂では、わずかな時間しか与えられず、
汚れで泡立たないシャンプーに時間を取られて1分しかお風呂に入れなかった。
それでも、「当たり前のように入っていたお風呂が、こんなにも有り難いものか」と
思ったそうです。



2. 食糧難

最初の数日は食料が少なく、老人や子供に優先的に割り振った結果、
調理を担当した女性方は直径3cmほどのおにぎりしかありつけない状況でした。
何度も何度も噛んで、甘みが出てもまだ噛んで、もったいなくて飲み込めない。
そんな状況で生き延びたそうです。


3. 米軍もすごい
そんなある日、ヘリコプターが止まりたそうにしていたので、
グラウンドに適当な印(○のなかに×印)を描いてみたら、
そこにうまく着地したそうです。
(通常は着陸してはいけない状況だったらしい。)
ヘリコプターから現れた人達は、真っ先に大きな袋を置きました。
その中には、おそらく自分たちの食料であるお菓子や食べ物(食べさしまで!)が
大量に入っていました。
その後も救援物資が大量に届き、
そのおかげで子どもたちにおやつを配ることができたと聞きました。


4. 自主防災の大切さ

この地域では、住民が自主的に防災活動を行っているそうです。
形式張らずみんなが参加したり、参加できなくても防災意識は持つ。
これが理想だとおっしゃっていました。

5. 津波でも流されないもの

漁村センターの館長さんがおっしゃっていた言葉。
「津波でも流されなかったものがある。それは人脈だ」
家や車が流されたとしても、人と人の繋がりは生きている。
このワークキャンプを通して、この言葉は正しいと実感しました。


6. 「なんで自分だけ生きてしまったのだろう」

ある住民の方が津波で友人知人を亡くしてしまい、つぶやいた言葉です。
この苦しみは自分の想像を超えているとはいえ、言葉は鋭く心に突き刺さりました。


考えたこと

ワークキャンプの意義:何のためにワークをしたのか?

なんとなく飛び入りで参加したワークキャンプですが、
何のためにワークキャンプに参加したのかを改めて考えてみました。


1. 住民のため

被災された住民方のために、何か役に立つことをする。それがまず第一義だと思いました。
地味で辛い作業も多かったのですが、それが住民方の豊かさに繋がるのであれば、
意味があったのかなあ、と。



2. 自分のため

一方で、今まで震災に無関心だった自分を変えるために、
被害の様子を目で見てみたいと思ったのが、そもそもの参加のきっかけでした。
作業の報酬として何かを得たいというエゴな自分もいて、
それは「ありがとう」の言葉だったり、感謝されることだったりします。

寄りそうって何?

ボランティア活動の主体には「震災に寄りそう集い」という名前が付いています。
「寄りそう」って何だろう、と考えました。
私なりに考えた結論は、「自分の日常生活や意識の隅っこに、震災への気持ちをそっと置く」でした。
震災関連のニュースに耳を傾ける。募金箱を見つけたら、数十円でもいいから入れる。
そうやって、被災された方の気持ちにほんの少しだけ近づくことが、
「寄りそう」ということだと思いました。

人間っておもしろい

ワークキャンプでは、人間味のある場面に多く遭遇しました。


その一つに、住民の方々と話す中での交流があります。
例えば、(こちらとして多少遠慮しましたが、)
結局お茶やらお菓子やらお漬け物やらお味噌汁やら、
差し入れを沢山いただいてしまいました。
なんでこんなに差し入れしてくれるのだろう?と考えてみると、
住民方からの差し入れは「お話ししたい」
「コミュニケーションを取りたい」というメッセージなのでは?
と思いました。
贈り物は、人間関係を潤滑にするツールなんだな、と改めて気づかされました。



逆に、会話の中でディスコミュニケーションも見つけました。
聞いた話から例を出すと、家を無くした方(Aさん)とその友人の会話があります。
友人さんは被災者ではないのですが、「大変だったね」「お気の毒だね」と言って慰めたり、
Aさんの気持ちを汲み取ろうとします。
しかし、Aさん本人はなんとなく会話のずれを感じていたそうです。



これらの例はほんの一例ですが、色々なコミュニケーション、ディスコミュニケーション
を通じて、人間の面白さを感じたのが、ワークキャンプの大きな収穫でした。

思ったこと

復興は少しずつ進んでいる

私たちが行った大船渡市の赤崎地区は、
仮設住宅などハード面の整備が少しずつ進んでいます。
住民の方は、やっと落ち着いて生活ができる状態を一旦は取り戻したと言えます。

心の交流が必要

しかし、住民の方々が心に傷を負っているのは変わりません。
今回のワークキャンプでは、「便利屋活動」を通じて話を聞く、
つながりを持つ、ということが重視されていたのですが、
このように心の面での支えが、今後は大切になってくるのだと思います。

「ありがとう」

まず、住民の方々に「ありがとう」を言いたいです。
支える側として活動したのに、いつの間にか支えられてしまいました。
活動を通して、大船渡の良さに気づかされて、人間の魅力に気づかされました。


そして、仲間に「ありがとう」。
ワークキャンプを企画してくれたディレクター各位、
色々なアドバイスや手助けをくれた人。
そして、辛く地味なワークを一緒にやってくれた人。
一人ではできないことも、人が集まればできるということに気づかされました。

最後に

震災に寄り添ってみよう

日常の1%だけでも、震災について想いを巡らせましょう。
震災関連のニュースに1分だけ耳を傾ける。ほんのちょっとだけ募金する。
もちろん無理しない範囲で。これだけでもいいので、細く長くの支援をお願いします。


長い文になってしまいましたが、ここまで読んでいただきありがとうございました。